第二章「プレイヤー」 (リンク小説)

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第二章 

 

ふふふ…
 
 
ダメな子ね、ちゃんとトドメを刺さなきゃ
 
 
たったひと突きで殺せる程上手くなったとでも思うようになったのかしらね
 
 
まだまだアマちゃんなのにね 
 
 
こうやって…バラバラになるまで切り裂かないとね 

 

 
 
~惑星モトゥブ クバラ・シティ~
 
「なるほど…こいつが…」
 
彼女の端末に表示された写真の人物
 
それは 
 
ジローという、ビーストの青年だった
 
生まれた街もも育ちも違えど、同じモトゥブ生まれということでガーディアンズ入隊当初から彼と意気投合をしていた
 
つい先日失踪者リストに目を通していた時に見つけた彼と久々の再会
 
だが、容態は錯乱状態
 
一体彼の身に何があったのか 
 
先ほどまで渋っていた彼女の想いは一瞬にして固まった
 
「わかった、すぐに向かう」
 
その目には一切の曇りがなかった 
 
たとえ、その先に過酷な運命が待っていようとも
 
『すまない、恩に着る』
 
レオは通信機越しに頭を下げた
 
転送先の彼女の端末にはその表情は写っていなかったが、彼の表情はいつになく真剣だった
 
 
 
時を間も無くして 
 
~ガーディアンズ・コロニー本部 尋問室~
 
「レオ!!!」
 
物凄い勢いで部屋のドアを開けたオルガ
 
入ってすぐ彼女の視界に入ったのは隔離された部屋で、椅子に座り、うつむいてるジローの姿だった
 
その直後…
 
「予想以上に早いな」
 
いきなり背後から声をかけられ彼女は思わずビクッと体をすくめてしまった
 
普段見せない彼女の様子を見てレオは笑わずにはいられなかった
 
「っはっはっは、何も驚くことはないだろう。俺はずっとここで待っていたんだぞ」
 
だが、その表情はすぐに真剣な物へと変わった
 
「…さて、あれがジローで間違いないな?一応確認してくれ」
 
尋問用のガラス張りの部屋の中でうつむいているジローを指差した
 
いつもと違った雰囲気ではあるが、彼女にはどう見てもジロー以外には有り得ないと確信していた
 
「ずっと、あんな感じなのかい?」
 
普段は少々荒っぽい振る舞いではあるが、優しさと明るさを持っている彼があれ程にまで気力を感じられないのは初めて見る光景だったため、流石に心配せずにはいられなかった
 
「あぁ、見ての通り今はすっかり意気消沈だよ…さっきまでは情緒不安定で急に、ここから出せだの帰してくれだの、派手に暴れてくれたけどな」
 
予想以上に症状は酷いようだった 
 
一体彼の身に何があったのか、一刻も早く確認せざるを得ないようだ
 
「無いとも言い切れないけど、もしかして敵…じゃないよな」
 
何者かがジローに変装、もしくは洗脳を施して自身に襲い掛かって来るかもしれない
 
そんな思いが脳裏をよぎった
 
「わからない…だが万が一という事もある、慎重にな…」
 
本来ならばレオだけで尋問を続けていても良いのだが、レオはジローとの繋がりは全くと言っていいほど無かった
 
そこで知り合いである彼女が召集されたのだが、女性とだけあって、流石にレオも不安の表情を隠せずにいた
 
「ふん…もし奴が敵で、襲い掛かってこようものなら、ジャック・ザ・リッパーが再び降臨するだけさ」
 
彼の心配をよそに、彼女はニヤリとした表情で応えた
 
そんな彼女のジャック・ザ・リッパーの一言にレオは黙りながらも、険しい表情で彼女を見つめた
 
クバラ・シティの悪夢を再来させるわけにはいかないのだ…
 
そんなレオの威圧感に流石の彼女も圧倒された
 
「…わ、わかってるよ…私はシルバーリング・オルガ、シルバリオ…冗談で言っただけだよ」
 
頬をポリポリと掻きながら苦笑いで返した
 
「わかればよろしい」
 
洒落にならない彼女の冗談故に、彼は険しい表情を緩めることはなかった
 
そして、隔離部屋のドアへと手をかけ
 
「それじゃ、何があったのか、搾り出してくるよ」
 
笑顔で明るく振舞い、レオにこれ以上心配をかけないようにした
 
だが、内心では物凄く不安でいた
 
それはジローの事でもあるが、何かこの事件には大きな何かが動いているのではという恐怖感から来ていた
 
「では、頼んだぞ。俺は他の部署を手伝ってくる」
 
そう言いつつも、彼女の事が心配で少しの間、様子を見ることにした
 
そして、オルガが隔離部屋ゆっくりとに入り
 
「ジロー…?」
 
と、恐る恐る一声かけた
 
ゆっくりと顔を上げるジロー
 
と、その瞬間、先ほどまで虚ろな目をしていた彼の目が急に一変
 
いきなり彼女へと飛び掛ってきた
 
「うおおおおおおおおおおお!!!」
 
それと同時に部屋を去ろうとしていたレオも異変に気づいた 
 
「…っ!」 
 
「…!オルガ!!!」
 
 
 

 
~続く~

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第二章 「プレイヤー」 (リンク小説)

序章

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序章5

 

ねぇ、クロウ 今度一緒にランチに行こうよ いい店教えてもらったんだぁ

 

お、いいね 来週の頭なら非番だから、その時にでもどうかな

 

そこなら私も丁度非番だから、二人っきりでゆっくり堪能できるね

 

楽しみだなぁ、久々に二人っきりでデートだなんて

 

ふふっ、ホントよね お互い最近忙しかったもんね

 

また休みが一致する日がいつ来るかわからないし、有意義な一日にしよう

 

うん、それじゃっ正午にニューデイズの昇空殿前で待ち合わせね

 

 

だが、それがクロウとの最後のコンタクトとなるのであった…

Org  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~惑星モトゥブ クバラ・シティ~

「…昔と変わらないな…ここも…私も…」

オルガは今日もイースレイ捜索を行っていた、トシの依頼ではなく、個人的に

かつて、ジャック・ザ・リッパーとして名をはせる事となった街

人生の転機を掴むこととなった街

そして、二度と来ることは無いだろうと思っていた街クバラ・シティ

グラール太陽系に広まっている違法改造品の七割がここ、クバラ・シティのブラックマーケットで製造、及び取引が行われている

噂ではガーディアンズの者もここで秘密裏に取引を行っているらしい

だが、今日はその取締りを行うつもりで来たわけではなかった

消えたガーディアンズ、そして再び現れたガーディアンズ、イースレイを探しに

彼女は、彼こそが今回の事件の鍵を握っていると信じて止まない

確証は無いが、ただ、なんとなくそんな気がしたのだった

だが、捜索を開始しようとしたその直後、一本の通信が入った

通信相手は一度グラールを救った英雄の一人として有名なレオからだった

『オルガ、今どこにいる!?』

普段はどっしりと構え、大人の手本ともいえるレオが珍しく慌てている様子だった

「ちょっと野暮用でモトゥブに来ているよ。でも、どうしたんだい?そんなに慌ててさ」

何事もないかのように振舞っているが、内心ではまた厄介事かと心の中でため息を漏らした

ただでさえ、イルミナスやイースレイの件で慌しい日々を送っているのだから

『人手が足りないって時に何ほっつき歩いてるんだ!

至急ガーディアンズ本部まで戻ってきてくれ!』

モトゥブに来ている理由を話してないとはいえ、流石に今の一言には彼女の気に触れてしまった

「別に遊んでるわけじゃねぇよ!…ったく…で、私に何か用があって通信してるんだろ?

さっさと用件を話しなよ」

すぐに頭に来てしまう彼女への対応は他の誰よりもレオは詳しかった

彼は、彼女がまだ幼い頃からの知り合いだからだ

『あぁ、すまん、つい取り乱してしまった』

すぐさま素直に謝る、これが怒ってしまった彼女への最善の方法だった

「わかればよろしい、で?」

未だムスっとした表情であったが、内心では許しているという事も彼は知っていた

そして、肝心な本題へと話題は移り

『ついこないだのガーディアンズ一斉失踪の件については知っていると、思うが…

それが、今日になって消えた連中が次々と再び姿を現すようになったんだ』

先日に続き、驚愕の事実が

現れたのはイースレイ一人だけでは無くなってしまった

これでは鍵を握るのはイースレイでは無いのかと思っている最中、彼はこうも続けた

『だが、現れた連中、情報によるとほぼ全員錯乱状態にあるらしい

詳しい情報はまだ入ってはいないが、薬物投与や催眠による錯乱状態など、様々な説が挙がってきている』

イースレイとは違う?

やはり鍵を握っているのはイースレイなのだろうか…

だが、ほぼ全員というだけあって、イースレイだけが鍵を握っているとは確信できなかった

「錯乱状態…詳しい症状は?」

『情報が正しいかどうかはわからないが、うわ言のように、ゲームの世界がどうとか…訳の分からない事を言っているらしい』

ゲームの世界?

何かのゲームの影響なのだろうか…

だが、ガーディアンズの間でそこまで大規模に流行っている物など思い浮かばなかった

しかし、これだけの為に通信をしてきたとは思えない

「それと私がどう関係しているんだい?」

そして、思い出したかのようにレオは続けた

『あぁ、そうだった 実はつい先ほど一人の失踪ガーディアンズの保護に成功したんだ

そこで、お前に尋問を依頼しようと思ってな』

尋問?とても彼女へ依頼する内容ではなかった

口で行う仕事よりも、体を動かす仕事の方が得意だからだ

「レオぉ、それわかってて私に依頼すんのかい?

私はそういうの得意じゃないんだよ…」

お断りと言わんばかりにため息雑じりに反論した

だが、彼にはどうしても彼女に依頼したい理由があった

『人手が足りないもの理由の一つなんだが、お前にしか頼めない訳もあるんだ』

私にしか頼めない理由?

だがすぐに察しはついた

「私の…知り合い…か?」

『そういう事だ、この写真を見てくれ、よぉく知った顔のはずだ』

端末に一枚の写真が映し出された

レオの言うとおり、よく知った顔だった

そこまで長いわけではないが、任務でよく付き合う事のある人物

「なるほど…こいつが…」

 

 

~続く~

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夢か幻か(リンク小説)

前回までのあらすじ 

序章

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序章4

 

ひとつの言の葉が響き渡る

私はお前

 

お前は私 

 

そして、私はお前を生んだ母

   

また一つ、言の葉が響き渡ってきた 

目覚めなさい私の可愛い娘よ

 

可愛い可愛い娘

 

唯一残った最後の子供よ

 

お前の兄弟らを殺めた奴らを殺してきなさい

 

【夢か幻か】

~ガーディアンズコロニー 4F~

「待て!」

急な呼びかけに振り返って見ると、そこにはよく知った顔があった

「どこへ行くつもりだったんだ?」

大きめな黒いコートを羽織ったヒューマンの男がオルガの許へ駆け寄ってきた

急いで来た割には汗一滴垂らすどころか落ち着いた様子でサングラスをクィっと中指で上げた

彼の名はトシ、普段から落ち着いた様子の彼だからこそ、彼女はトシの妙なまでの落ち着きっぷりには疑問を抱かなかった

ただ、彼の質問には彼女は答えられなかった

どこへ行くつもりでもなく、ただじっとしていられなかったからだ

「あ…いや…どこへ…行くつもりだったんだろう…は、はは…」

毎度の事ながら、緊急事態の時に考えるよりも先に行動を起こしてしまうのは彼女特有の癖だった

その様子を見てトシは、またいつもの事かと言わんばかりにため息混じりで返した

「全く…その癖直せよ…」

オルガとトシは長い付き合いだった

彼女らには幼い頃、同盟軍が秘密裏に出兵させていたチャイルドソルジャーだった過去がある

今ではお互い違う道を歩んでいるが、未だに交流は続いていた

いわゆる腐れ縁である

だが、彼女らとの間には深い亀裂が生じていた

お互いそれには触れないようにして生きているが、あの惨劇の事はオルガはもちろん、トシも忘れてはいなかった

「癖なんだから…直しようがないだろ…」

事実なだけに小声で反論することしか出来なかった

これも毎度の事である

だがトシは彼女の小言を聞き入れる事なく、この妙な事態についてオルガに質問を投げかけた

「それよりも一体これはどういうことだ?パルムだけかと思ったら惑星全土らしいじゃないか」

早くも惑星全土、ガーディアンズ及び、同盟軍らにも今回の事態について情報が飛び交っているようだった

オルガも完全には把握していないながらも先ほど起きた謎の現象について話した

「チューンナップ店奥のシミュレータールームで戦闘を終えた直後に急に目の前が真っ白になったんだ…そしたら…ルークも…ハンスもいなくなっててさ…」

必死に頭の中で整理しながら話してはいるのだが、未だにパニック状態が収まりきっていないようだった

「ふむ…それで?」

トシはそんな彼女を落ち着かせるわけでもなく、ただ静かに聞き手に回っていた

サングラスの奥で彼の鋭い瞳が彼女をじっと捉えて離さなかった

「えぇと…妙に外が静かだったから慌てて出てみたんだけど、住民の皆はまるで何事も無かったかのように過ごしてるんだ…なんていうか、生気を感じられなかったな…」

急ぎ、本部へ駆けつけてしまった彼女は住民らとの接触をしていなかった

だが、今その様子を思い出してみると妙な雰囲気だった

住民だけじゃない、コロニー全土から魂が抜けてしまっているように思えてきた

「そうか、こちらも同じような感じだな」

トシも先ほど駐屯先のパルムにて起きた事態を説明した

「同盟軍内部は普段と変わらないのだが、どうも外の住民らの様子がおかしいんだ

意識はあるにはあるんだが、焦点が定まっていなくて、やはりお前が言うように生気を感じられなかったな」

コロニー全土だけでなく、全ての惑星から魂が抜けてしまっているようだった

最早グラール太陽系は外殻だけ存在するゴーストタウン化してしまった

中身の無い世界

二人はこれから更によからぬ事態が起きようとしているのを感じ始めた

「あ…そうだ…!」

ふと我に返り、彼女は今回一番重要な点について彼に質問した

「本部の話じゃガーディアンズが大勢行方不明になってしまったんだ、それも急に目の前から…もしかして、同盟軍でも同じことが?」

やはりか、といった表情でトシは答えた

「同盟軍の被害はそれほど多くはない、何故かガーディアンズだけ被害が深刻らしいな」

同盟軍直属の暗部のトシは同盟軍の内部事情にも詳しいが、その他の組織についても様々な情報を持っている

「グラール教団も同盟軍と同じく被害は少ないようだな、そしてイルミナスに関しても同様だ。だが、イルミナスに関しては既に被害を最小限に抑える手立てを施していたらしい」

流石はキャスト至上主義の同盟軍に所属することが出来ている人間だけはあるといった感じだった

敵対組織のイルミナスの情報さえ得ているのだから

「最小限に抑える手立て?」

主謀で無いにも関わらずこの事態を避けることが出来ているイルミナスにオルガは疑問を抱いた

「ガーディアンズも通信で聞いていたはずだが、某かの協力者によってこの事態を知ったらしい。」

そして急にトシの表情が険しくなった

「そして被害を抑えるために奴らは一部の部下らを殺したらしい…」

予想だにしていなかった答えだった

防ぐというよりも、まるで危険を排除するといった単純な手段だった

「そんな…!殺しただって!?だって…仲間だろ?」

イルミナスのあり得ない行動に彼女は更にパニックに陥っていった

深く考えても彼女には考えられない行動だった

【仲間を殺す】だなんて…

「事実は事実なんだ、奴らの考えまでは俺にはわからん。そうでもしないと防げない程の事なんだろう」

ため息交じりにサングラスを再び上げながら答えた

まるでイルミナスの考えなど興味が無い、といった感じだった

「それにまだ協力者の情報がない、そちらについては調査を続ける。それよりも…」

トシは眉間にしわを寄せ、何かを言いかけて急に黙り込んだ

流石に何かを言いかけて黙られるのは彼女にとっても気持ちの悪いものだった

「…それよりも…?」

彼の顔を覗き込むように恐る恐る聞いてみた

「今回の事態と直接関わりがあるかはわからないんだが、俺たちは今、とある消えたガーディアンズを追っているんだ」

おかしな答えが返ってきた

消えてしまった者を追うなど出来るはずがないのだから…

「消えたんだったら存在するわけないじゃないか、それに消えたガーディアンズなんて大勢いてわからないよ…」

彼女の頭は完全に混乱していた

不可解な答えについて考えてみるも答えを導き出すどころか、様々な憶測が出ては消え、絡まっていった

「消えたには消えたんだが、そいつは…再び現れたんだ、そいつだけが消えたガーディアンズの中で再び姿を現し、そしてグラール太陽系を瞬時に移動しているんだ」

消えては現れる…ナノトランス技術で移動しているのかと考えてみるが、それでも惑星間を単体で移動できるガーディアンズなど存在するはずがなかった

それどころか、ヒトなのかすら疑問に思えてきた

考え込み、黙り込んでしまっている彼女を尻目にトシは数枚の写真を彼女に見せた

「こいつが俺たちが追っているガーディアンズだ。この数十分の間に全ての惑星で捉えた物だ」

よく見ると撮影時間が数分置きに撮られている事になっていた

「こいつ…確か…」

彼女は覚えていた、ほんの数回しか任務に同行した事がないのだが

到底ガーディアンズとは思えないほど非力なテクニック攻撃部隊のニューマン

一人だけ背が低く、ほっそりとしていた容姿は忘れるはずもなかった

「イースレイ!こんな奴が…!?だって、あいつテクニックですら大した力を発揮できないんだぞ?」

間髪入れず、トシは同じような答え方をした

「事実は事実だ、現に全惑星で包囲網を敷いてみても、完全に追い詰めたという状況でも、奴は俺たちの目の前から消え、そして違う星に移動してるんだ」

それでも彼女には信じられなかった

テクニックすらまともに扱いきれてないイースレイに自らを転移させる事など出来るわけが無いのだから

更にトシはこうも続けた

「どうもイースレイの様子がおかしいんだ…まるで急に人が変わったかのように鋭い目つきになっていて、そう…強大な力を得ているような雰囲気だった。だが、狂気に満ちた顔じゃなかったな…」

人が変わる…それなら納得はいくが、狂気に満ちた感じで無いのならSEEDに侵されているとは考えられなかった

「もう、どういう事さ?さっぱりわからなくなってきたよ…」

最早彼女には答えを探ることが出来なくなっていた

少々面倒くさがりの彼女ではあるものの、今回ばかりは必死に答えを探ってはいた

だが、それでも導き出すことは出来なかった

「俺にもわからんさ…だから追っているんだよ」

再びため息混じりに答えるトシ

そして、二人の間に暫し静寂の時が流れた

暫くしてその静寂をトシが裂いた

「困った事にな…今現在イースレイの足跡が完全に途絶えてしまったんだ。

部隊からの定時連絡はあるものの、発見報告はない…かといって、完全に消滅したとは考えられない、どこかに潜伏していると考えた方がいいだろう」

潜伏…その道のプロである彼ら暗部ですら見つけられない程では事態は困難を極める物だと彼女は感じとった

「ややこしい事になってきたなぁ…」

面倒な事が嫌いな彼女にとってイースレイの件は頭を痛める物でしかなく、ため息を吐きながらうな垂れるしかなかった

そんなオルガの様子を見てトシは今日のところは打ち切った方がいいだろうと感じた

「これ以上の捜索は時間の無駄だ、また明日捜索を再開するしかないな。俺たち部隊の疲労も限界だ…短時間でグラール太陽系を何度も回ったんだからな…」

こうしてこの日の様々な疑問を残しながらも二人は別れ、一日を終えた

イルミナス壊滅まで後一歩というところで新たな問題と謎を残して…

 

 

第一章【夢か幻か】                                   ~Fin~

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前回までのあらすじ

夢か幻か

序章

序章2

序章3

 

二つの世界が完全に交わりし時

 

その時こそ

 

現実と理想の世界が

 

消滅する時だ

 

~ガーディアンズコロニー クバラチューニング店~

目の前が急に真っ白になった…

何も…見えなくなった…

視覚だけじゃない

聴覚も、嗅覚も、全て感じなくなった

そして世界に放たれた

コロニーとそれらを取り囲む三惑星

全てを飲み込むほどの光に覆われた

それは、まるで…

合の時のようだった

暫くしてようやく視界も晴れ、聴覚なども戻った

これほどの大事なのにも関わらず、コロニー内部は恐ろしいくらい静かだった

「一体…何が起きたんだ…」

肩に負った傷の事すら忘れ、先ほど起きた事態に悪寒を感じていた

それからすぐ我に返り、辺りを見回したが

そこにはルークもハンスもいなかった…

「二人とも…どこに行っちまったんだよ…!」

慌てて立ち上がるも思いのほか出血が酷かったらしく、再び地に膝をついた

手持ちにあった携帯緊急用医療器具(スケープドール)を使用し、止血及び傷の応急手当をした

ふらつきながら店を後にし、ショッピングモールに出てみたが

まるで何事もなかったかのように人々は過ごしていた

「なんで…なんで皆平然としているんだよ…」

そして、オルガはガーディアンズ本部へと足早に向かった

そこに行けばきっと何かがわかると思って…

~ガーディアンズコロニー5F ガーディアンズ本部~

本部は先ほどの区画とは全く逆の光景だった

慌しく駆け回るオペレーションスタッフ、ガーディアンズ

何かに追われるように本部中を行ったり来たりしていた

「ミーナ!何があったんだ!」

受付のミーナへと慌てた様子で詰め寄る彼女

ミーナも忙しそうだったが、事態を伝える事も彼女の仕事

作業の手を動かしながら、彼女に事態を説明した

「あぁ、オルガさん!大変なんです!もう何がなんだか…!」

かなり取り乱してるようで言葉を何度も詰まらせた

「落ち付けミーナ!さっきの光はなんだ!それに、なんで住民たちは皆平然としてるんだ!」

問いかける彼女もまた我を忘れ、ミーナへと質問攻めをしていた

「オルガさんの方こそ落ち着いてください!そんなに一遍に答えられませんよ!」

尚もミーナは対応に追われつつ、彼女の問いかけに答えた

そんな彼女の一言にようやく我に返ったオルガ

一息置いて再び問いかけた

「あぁ、すまない…まずは…さっきの光は一体なんだ?」

落ち着きを取り戻したオルガに対して安堵の表情を浮かべる暇も無いミーナ

それでも少しでも落ち着こうとしながら彼女の質問に答えた

「それが…私たちにもわからないんです…このコロニーだけじゃなく、他の三惑星にも同様の現象が起きたとしか…」

これほどの現象を起こせるのはイルミナスしかないとオルガは考えた

しかし、確証がない

再び順を追って問いかけた

「じゃあ、もう一つ、なんで住民たちは何事もなかったような顔しているんだ?」

その質問にもミーナは困惑の表情を浮かべた

「すみません…それもわからないんです…住民の方への質問をする暇すらなくて…それよりも今はガーディアンズの大量失踪の件の対応で手一杯なんです…」

オルガの予想を遥かに超えた事態が起きているようだった

イルミナスによる攻撃とも思われたが、何かが違う

そんな予感がした

「ガーディアンズの失踪!?それに大勢だって!?」

最早オルガにさえ予測が出来ないほどに大事になっていた

更にミーナは事態の深刻さを伝えた

「はい…それも失踪の仕方が妙なんです…急に目の前からガーディアンズの方が消えたんです!」

人が急に消えるなんて聞いた事がなかった

いくらナノトランス技術が発展しているとはいえ、大規模ナノトランスが可能なのは

対SEED用の封印装置くらいしか思い浮かばなかった

「急に消えた…!?一体何が…」

暫し考え込むオルガ

そんな中、ガーディアンズ本部へ一本の通信が入った

通信元は…

イルミナスによるものだった

「御機嫌よう…ガーディアンズ諸君 私はカール・フリードリヒ・ハウザーだ」

急な通信に総員作業の手を止め通信へと注目した

「イルミナスからの通信!?」

やはりイルミナスからの攻撃だったのか

そんな思惑が脳裏をよぎったが…

「今回、コロニー及び三惑星への不可解な現象が起こったようだが…これは、我々イルミナスによるものではない!」

予想外の言葉が発せられた

イルミナスではない、第三の組織によるものか?

そうとも考えられたが、これほどの事を起こせる事が可能なのはイルミナス以外考えられなかった

そして、彼はこう続けた

「幸い我々は事態を事前に知ることが出来、被害を最小限に抑えられることができた

これも…全てとある協力者によって未然に防げたことなのだ」

協力者?イルミナスへ協力する者など、いるのだろうか…

いるとしてもヒューマン原理主義に共感するヒューマン以外考えられないが…

「どうやらガーディアンズ諸君らの被害は甚大なようだな…クックック…」

見下したような笑い声に牙を向きたくなる気持ちだったが、事実なだけに返す言葉がなかった

恐らく他の皆もそうなのだろう

「これでガーディアンズ…いや、グラール太陽系は終わりだな…クックック…ンフハハハハ…ハァーッハッハッハ!」

そして一方的だった通信は切られた…

「イルミナスによる攻撃ではなかったのですね…では、一体誰が、何のために…」

ミーナも、他のガーディアンズも皆不安を隠しきれなかった

ようやく新総裁が決まり、これから新たな船出だという時に…

そしてオルガは気が付けば外へと走り出していた

「あ…!オルガさん!どこへ行くんですか!…何かあてはあるんですかーー!!」

遠のく彼女の耳には入っていなかった…

~ガーディアンズコロニー4F~

「くそう…一体何なんだよ…!」

得体の知れない胸騒ぎを覚えるオルガ

居てもたってもいられず、再び走り出した…

だが、その時

「待て…」

 

~続く~

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前回までのあらすじ

序章

序章2 

 

ある男はこう言った

 

教えてやろう…貴様は我々のためにある…いや、作られたとでも言っておこう

 

我々イルミナスのためにな

 

フフ…フハハ…ンフハハハッハッハッハ

 

~VRフィールド ガーディアンズ地下通路~

「あ…あぁ…危ない!」

ハンスの叫びに呼応するかのように計器に釘付けだったルークもようやく事態に気づいた

「オルガ!後ろだ!」

だが、2人は焦りのあまりマイクを使うことを忘れていたため、その声は届かなかった

「あぁ!?聞こえないよマイクをつか…ぐあっ!」

突如背中に強烈な衝撃を受けた

何が起こったのかを認知する間もなく、彼女は数メートルは吹き飛ばされた

何とか受身を取り、体勢はすぐに整えることができたものの

現実と変わらないその痛みに地に膝をついた

「くっ!…背中が…VRのくせにこうもリアルとは…」

そしてようやくルークがマイクを使い彼女に危険を伝えた

「オルガ!まだ来るぞ!」

そう奴はまだ沈んでいなかった

「え…?」

よく見ると彼女の足元に大きな影が

それを見た彼女は反射的に跳躍してその場から距離を置いた

それとほぼ同時に何か大きな物が降ってきて、地面に突き刺さった

「……!…馬鹿な…なんで生きてるんだよ…!」

確かに倒したはずだった

彼女の目の前には上顎から先が無いマガシが立っていたのだ

たが、動いているのはその1体だけだった

半身を分断されたマガシ、細切れにされたマガシはどうやら既に細胞壊死を起こし

消えているようだった

これならいけると彼女は確信した

「ふん…なら今度こそ動けないようにしてやるよ!」

だが…

もう一度セイバーを起動し、彼との距離を詰めようとしたその時

「痛ぅ…!」

先ほど受けた背中へのダメージが思いのほか大きく

力が入らなかった

一方、VRシミュレーターの司令室では

「なんだよこれ!こんなプログラミング入力してないぞ!」

焦るルークは部屋中を駆け回り、様々な計器や操作盤をいじっていた

「主任!何してるんですか!オルガさんが危険ですよ!早く強制終了してください!」

彼女の様子を見てこれ以上は危険と判断したハンスはシミュレーションの終了を促した

しかし

「さっきからやろうとしてるよ!だが、一切操作を受け付けないんだよ!…計器も異常な数値を出しっぱなしだ…なんだよこれ…」

ルークも危険と判断し強制終了を行おうとしていたが出来ずにいた

「じゃ、じゃあ一体どうすれば…」

どうしようも出来ない二人は彼女を信じるしかなかったのだ…

そして彼女の戦いは続いていた

足を止めている間、彼の容赦ない一撃が繰り出された

「ふぁぁぁぁぁぁ!」

最早声にすらなっていない雄たけびを上げつつ

再び突進を繰り出してきた

「くそ…動け、動けよ!」

膝が笑ってなかなか思い通りに体が動かない

スピードだけが彼女の武器だけに、この状況は圧倒的に不利だった

力との勝負では勝てるはずがない

避けるのが無理だとわかった彼女は真っ向勝負を決意し

彼の突進を剣で受け流す事にした

「くっ…重い…」

やはりSEEDの力は絶大で、受け流すのも困難のようで

幾度と受け流し続けていたが、体力の差も大きかった

「はぁ…はぁはぁ…くそ!」

最早勝ち目はないように思えた

この状況を把握したのであろうか、SEEDマガシは下顎だけで不適な笑みを浮かべているかのように見えた

「こいつ…頭がないのにわかるのか…」

そう言うと彼女は足元にあった瓦礫を拾い

自らの右腕に勢いよく突き刺した

「ぐぁぁ…!」

不可解な行動にも思えるその行い

だが、その直後彼女の足の震えは止まりしっかりと地に足をつけていた

他所を痛めつけることでアドレナリンを放出し一時的に痛みの意識を反らしたのだ

片腕で彼に勝てるかは全くもって確証はなかった

だが、やるしかなかった

「この一撃で終わらせる…これでダメなら…私もここまでだな…」

セイバーを左手で持ち、後ろに大きく振りかぶり体勢を低く構えた

そしてマガシもまた体勢を低くし、最後の一撃を放とうとしていた

「うおおぉぉぉぉぉ!」

そして、全てが終わった

二人が通り過ぎたその直後

彼女の右肩から血が噴出していた

「くっ…!だが、私の勝ちだね…」

負傷し、膝をがくりと地につけながらも彼女はマガシの方を見た

そして、マガシに十字の傷が走り、四つに分断された

「流石に、もう起き上がれないだろう…」

その直後、VRフィールドが風化するかのように消えていった

まるでマガシの死に呼応するかのように…

「おい!オルガ!大丈夫か!?」

慌てた様子でVR装置へとルーク達が駆け寄ってきた

「大丈夫ですか!?あぁ、酷い傷だ…」

彼女の傷を見て顔面蒼白になるハンス

応急措置として店にあった布切れで傷を押さえた

「私としたことが…油断したよ…」

独り言を言うかのようにうつむきながら小声で答えた

「あんたも意地の悪いシミュレーション作るねぇ…兄貴そっくりな考えだな」

だが、ルークからは彼女の予想とは違った答えが返ってきた

「いや、あれは俺がプログラミングしたんじゃないんだ…本当なら既にシミュレーションは終わっていたんだよ…なのに一体だけ急に動き出して、それと同時に操作が効かなくなったんだ…これってまさかイルミ…」

そして…

 

それは起こった

 

世界が

 

一つになるその時が 

 

世界が

 

混沌となるその時が 

 

~続く~

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夢か幻か(リンク小説)

前回のあらすじ

私は一体

 

何のために作られたのだろう

 

この思考も

 

感情さえも

 

作り物なのかな…

 

~VRフィールド ガーディアンズ地下通路~

 

「やはりお前か…マガシ」

深淵の闇から姿を見せたのはあの時戦ったマガシだった

そう…

SEED化したマガシ

僅かな静寂が辺りを包んだ

自分より巨大な相手を目の前にしても全くうろたえる様子を見せないオルガ

以前戦った時は一瞬で片付けたからこその余裕の表れなのだろう

だが、少し状況が違った

「…!囲まれた!?」

そう気が付けば3体ものSEEDマガシに囲まれていたのだ

「フフフ…」

3体同時に不気味な笑みを浮かべ

そして戦闘体勢に入った

だが、それは一瞬の出来事だった

「滅びの運命には逆らえぬのだ!あきら…え……お…ぉ」

オルガの正面にいたマガシの上あごから先が無くなっていた

そして囲まれていたはずの彼女の姿がない

そんな状況にマガシは驚愕した

見渡してもどこにもいない

「無駄口叩いてる暇があったらかかってきな!」

どこからか彼女の声がした

そして頭を無くした1体のマガシが倒れると

その後ろに彼女はいた

一瞬にしてセイバーモードを起動し、正面のマガシの顔を切り抜けたのだ

「ぐぅぅぅぅ…舐めるな!」

彼女の挑発に怒りを覚えたマガシは残りの2体同時で彼女へ飛び掛った

しかし、それでも彼女は彼らに背を向けたままだった

「死ぃぃぃねぇぇぇぇ!」

流石にセイバー1本では2体同時の攻撃は防げないものだと思われた

だが、しかし

「遅い、遅いんだよ…動きに無駄がありすぎる」

彼女はしっかり彼らの攻撃を受け止めていた

手に持っていたセイバーの石突からはもう1本の刃が出ていた

2つ目のスイッチを起動し、ダブルセイバーモードにしたのだ

「ば、馬鹿な!」

予想していた結果と違い更に驚愕するマガシ

だが、それでも冷静な判断で追撃を開始する

「これなら…どうだぁ!」

1体のマガシは正面きって突撃をし、もう1体は上空からの追い討ちをした

狙う場所は刃の無い柄の部分

しかし

「読みはいいね…でも、まだまだ甘いね」

突撃してきたマガシをさっと横に避け

もう1体の追い討ちには再び防御姿勢をとった

「フハハハハ!柄を破壊してしまえばいいことよ!」

そして彼の腕が物凄い速さで振り下ろされた

しかし、それは空を切った

「ちぃ、外したか!」

そして後ろに振り返ろうとしたマガシは体に異変を感じた

だが、既に遅かった

「な、なにぃぃぃ…!」

彼の体は上半身と下半身で完全に分断されていた

その倒れる刹那に彼が見た物は

2本のセイバーを手にした彼女の姿だった

「だから言っただろう…甘いと」

倒れゆく彼に吐き捨てるように言った

彼の攻撃を受け止めると見せかけて、ダブルセイバーの柄をねじり

2つのセイバーに分解するツインセイバーモードにし

一瞬の隙をついて彼の体を分断したのだ

「なる…ほど…そういう…こと…か…」

そして残された1体のマガシ

流石に1体では勝ち目がない

「ぐ、ぐぅぅぅぅ…」

最早言葉すら出ない

3体同時でなら勝てるものだと思っていたのだから

「どうした?もう攻めてこないのか?…ならば、こっちから!」

姿勢を低くし、今までにない威圧感を見せた

どうすることも出来ないマガシはやぶれかぶれな攻撃をすることしか出来なかった

「ぶるぁぁぁぁぁぁ!」

大振りな打撃は当然当たるはずもなく

その腕は地面へと突き刺さった

「その程度とはね…失望したよ」

そして彼女の反撃が開始された

まるで舞っているかのように見えるその斬撃

その攻撃にはセイバーモード、ダブルセイバーモード、ツインセイバーモード

の3種が駆使され、次々と彼の四肢が分断されていった

「うぉぁぁぁぁぁぁぁ…ぁ…」

全てが終わった頃には細切れになっていた

「ふん…他愛の無い」

VRルーム司令室にいたハンスとルークはこの一部始終を唖然として見ていることしか出来なかった

「こいつぁ驚いたなぁ…以前より更に力つけてないか…」

ぽっかりと口を開けていたルーク

その隣で同様のハンスは言葉すら出せずにいた

「おい、終わったぞ!…聞こえてんのか!」

ガラス越しに終了を伝えるオルガ

だが、この時異変は起こったのだ…

「あ…あぁ…危ない!」

先ほどまで唖然としていたハンスが急に慌てふためく様子で必死に彼女に危険を伝えた

 

 

続く

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夢か幻か(リンク小説)

世界は一つしか無いものだと

 

 

私は思っていた…

 

 

今ここにいる世界こそが

 

 

現実だと信じていた…

 

 

だけど、現実と理想は違った

 

 

私は知ってしまった…  

 

知らされてしまったのだ

 

 

この世界が偽りの世界、作られた世界であることに… 

 

~某日ガーディアンズ・コロニー宿舎~

この日はどことなく取り巻く空気が違うようにも思えた…

「ん、んん~…あ~…んだよ…もう朝か…」

いつものように気だるく起きる私

「お目覚めですか、オルガ様。随分と眠られてましたね」

いつものようにパートナーマシナリーであるサニーの対応

けど、何かが違う気がしていた

「ん?…そんなに寝ていたんだ…ふぁぁ~…今何時?」

寝ぼけ眼を擦り、大あくびをしながら現在の時間を聞いてみた

「現在午前10時13分です。かれこれ8時間弱の睡眠時間でしたね」

淡々とした口調でありながらも笑顔で答えてくれた

いつもこんな感じで若干無愛想にも思えるが、慣れてくると可愛いものだ

「8時間も寝てたのかぁ…どうりで節々が少し痛むわけね…」

ベッドからゆっくり体を起こし、体の調子を窺ってみた

どうやら前日の作戦が深夜まで長引いてしまっていたことと、寝すぎによる

疲労のようだった

「大丈夫ですか?かなり無理をなさられてたとお伺いしましたが…」

こうやって心配してくれるから、多少の疲れも気休めではあるけど、癒されるもんなんだよね

「…すー…ふぅ…なぁに、いつものことさ…皆頑張ってるんだ、私だけ手を抜くわけにもいかないよ」

おもむろに寝起きの煙草を吸い、うつむきながら答えた

「煙草は体に悪いのでお辞めになって下さい。何度言っても聞かないんですから…」

頬をぷくっと膨らませ、私を叱った

だが、これもいつものことだった

あぁやって怒っている姿もなんか可愛いんだよね

まるで自分の娘とでも話してるようにも思えてきた

「まぁ、そう言うなよ…こいつぁ私にとって癒しのひと時なんだからさ…」

こうやっていつものように軽くあしらって朝の一服を済ました

「そういえばオルガ様、先週依頼していた武器のカスタマイズが完了したと、チューニング店からメールが入ってますよ。御覧になりますか?」

そう言いながらも私が答える前に携帯端末を私に差し出した

「ありがとう…どれどれ…」

 

送信者:ルーク・ボイド

件名:悪いな、遅くなっちまった

よう、オルガ

待たせちまったな。何度も微調整やテストをしてようやく完成したぜ

流石に時間をかけただけあって俺としては完璧な出来だ

いつでもいいから取りに来てくれよな

しっかし、なんでこんな旧式タイプの武器のカスタマイズなんかするんだ?

リアクター出力が不安定なお蔭で苦労したぜ

普通にGRM製の物でよかったんじゃないのか?

まぁ、お前に何か考えがあっての依頼だとはわかるんだけどな

っと、そんなことはどうでもいいか

じゃ、待ってるぜ!

 

「ようやく完成したかぁ…ったく待たせやがって」

口ぶりは悪いものの表情は嬉しそうだった

「一体どんな依頼をされたのですか?」

今回の件についてサニーにも話してないのだった

それほど個人的に秘密裏に作りたい武器だったのだ

「まぁ、見てのお・た・の・し・みってやつだな」

満面の笑みで答えながら、ナノトランサーを起動し、普段着へと着替えた

「早速行くということは、そんなに待ちわびていたんですね」

状況を知らないとはいえ、彼女にとっても主人の笑顔は嬉しいようでサニーもまた笑顔だった

「よし、それじゃっ受け取りに行ってくるから留守番頼むよ」

サニーの頭を軽く撫でて部屋を後にした

ガーディアンズ・コロニー2F クバラチューニング店

その店の中にはルークの姿は無く、若い青年が1人いるだけだった

「いらっしゃい!オルガさん 例の物の受け取りですね?」

この明るく振舞うヒューマンの青年の名はハンス

歳はオルガと大差ないが、この店での勤務暦は既に4年になる

「よぅハンス、ボイドはいないのかい?」

軽く挨拶を交わし、辺りを見渡しながらルークを探した

「主任なら奥で動作の再度テストをしているとこですよ」

(メールの内容と違うじゃないか…)

「なんだよ、まだ終わってないのか?話が違うぞ…」

やれやれといった様子で落胆するオルガ

その直後

「おぅ、オルガじゃないか、えらく今日は早く来たんだな

今、動作のチェックしてたとこだ 念のために確認しておきたかったんでな」

店の奥から現れたルークの手には柄が通常のセイバーの2倍ほどはある旧式セイバーを持っていた

「テストなんて私が直々に後でやるんだからいいじゃないかぁ」

眉間にしわを寄せ、そのセイバーを手に取ってみた

「いやぁ、それがなぁ、やっぱ旧式だけあって出力が不安定なんだよ

それで、今微調整してたってわけだ んで、ようやくブレ幅の少ない範囲が見つかって

ほぼ100%の力を発揮できる段階にしておいたんだよ」

オルガの依頼したチューニングは旧式のセイバー

クレアセイバーだった

柄は丁度2本分あり、フォトン放出スイッチも2つある

「リアクターに関しては完全に丸投げしちゃったから、正直できるとは思わなかったよ

よく出来たなぁ?」

その質問に対し、ハンスが答えた

「実はリアクターは僕が担当したんです

2本のセイバーを使っているのでリアクター共有なのは変わらないんですが

片方だけ出力させた時と、ドッキングした時、分割した時

それぞれ出力量にリミッターをかけておいたんです」

少し自慢げに鼻を擦るハンス

「なるほどなぁ…こりゃ早速使ってみたいねぇ」

説明を聞いて気分が高揚したのか、今すぐにでも起動させてみたくてウズウズしてる様子のオルガ

「よし、ならいつものVRルームでテストしてみるか」

ルークが刺した方向は店の奥、この奥に中規模のVRルームがあるのだ

主に武器のチューニング後のテストなどに使うのだが

一部のガーディアンズに訓練用として提供しているらしい

強化ガラスで囲まれた無機質な装置

これがVR(ヴァーチャルリアリティー)装置

「さぁて、オルガ テストに使う訓練レベルはどうする?」

隔離された別室からマイクを使い彼女に問いかけた

「はん、そんなの任せるよ なんでも来いってんだ」

自身に満ちた表情で装置の中央に立ち、答えた

「そうか、ならば秘蔵の訓練メニューを出すか」

なにやら不適な笑みを浮かべつつ、ルークは手元のキーボードを打った

その様子に慌てて反応するハンス

「主任!アレを使うつもりですか!?アレは危険ですって!」

慌てふためく表情の奥にどこか恐怖さえ見えていた

だが、そんなハンスの様子を見ても落ち着き払っているルーク

「まぁ、慌てんな あいつならエクストラレベルも容易くクリアするさ」

やや無責任ともとれるその言葉にハンスも流石に怒りをぶつけた

「そんな…何を根拠に!」

それでも尚、ルークは落ち着いた様子だった

「根拠は…ない…だが、あいつは数々の修羅場を潜り抜けてきたんだ

必ずやり遂げると俺は信じてる…」

ルークの言葉に怒りを通り越して呆れた様子のハンス

「そんな…もしものことがあったら…」

彼らのやり取りがマイクから漏れてるにも関わらず、オルガは瞑想をし

精神集中をしていた

そして…

「おい、まだか?こっちは準備万端だよ!」

瞑想を終えた彼女の様子は一段と凛々しくなっていた

「おぅ、悪いな、じゃあ始めるぞ!」

準備自体は終わっていて、後は最後にプログラム起動のためのエンターを押すだけだった

『システム…オルグリーン…VRトレーニング起動します』

装置からアナウンスが流れると同時に装置内に閃光が走り、彼女の辺りには擬似フィールドが形成された

「ここは…コロニーの地下通路か…」

擬似フィールドとはいえ、再現度は高く本物と寸分違わない物だった

よく出来てるなと関心しつつ辺りを見回した

だが、地下通路とだけあって数メートル先は闇一色だった

「フフフ…」

深淵の闇からどこか聞き覚えるのある声がした

「この声は…まさか…」

そう、あの時私は奴と戦った

そして

一瞬で消し去ったことを覚えている

少しずつ奴の姿が闇の奥深くから見えてきた

「やはり、お前か…」 

 

 

~続く~

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パラレルストーリー

再びパラレルストーリーなるものを書いてみました

詳細はイーさんの記事にて

 

運命とは繰り返す物…

それは水面に出来る清らかな波紋のようでもあり、歪んだ螺旋のようにもなる…

その運命の中に彼らは何を見出したのか…

 

~モトゥブ荒野~

1人の少年が荒野にある簡素な墓場にたたずんでいた

とても立派な墓とは言えず、2つの木材を交差させ、十字架のようにしてある物が地面に刺されているだけだった

その墓はゆうに30を超す数だった

「こんな簡素な墓ですまないね…。でも、これで安らかに眠ってもらえると俺も助かるよ

同じガーディアンズに殺されて相当悔しいかもしれないけど…」

ギンは多数の墓に対して謝罪するかのように呟いた

そしてこの時、彼は空気の流れがかすかに変わったのを感じた

普通ならば何事もないかのように見過ごす物だが、この時ばかりは生命の危機を感じた

「来る…!」

とっさに地面に伏せるギン

その直後

ザン!

と、音を立て、1本の刃物が墓に刺さった

「こ、これは…!」

見上げるとそこには見覚えのある刃物があった…

数年前、死闘を繰り広げた彼女の物

ソウルイーター

「クハハ…惜しかったなぁ、避けなければ楽になれたものを」

聞き覚えのある声に反応し、振り返るとそこに彼女はいた

「オルガ…何故ここに再び来た…」

彼女の姿を見ると同時にあの時の記憶、感情が蘇った

無数の遺体の山…狂気の一撃…

「久しぶりの再会だというのに、つれない奴だなぁ…」

どこか彼女の様子がおかしかった

口調もそうなのだが、振る舞いも以前とは大きく違った

そして何より目の色が違ったのだ

以前のような淡い蒼目ではなく真紅の色に変わっていたのだ

「んまぁいい…早速始めようじゃないか…随分と久々の大物だからなぁ

は飢えてるんだよ」

挨拶などどうでもいいらしくオルガは戦闘態勢へとすぐさま移行した

だが、ギンは戦うことよりも気になる事があった

「ちょっと待った…お前…誰だ!」

回りくどい質問はせず、率直に彼女に質問した

「クハハ…何を言ってるんだ…俺だよ、俺…」

次第に彼女の声が二重のものになっていった

それは本来の彼女の声と、聞き覚えの無い男性のものとだった

「答えになってない!お前誰だよ!」

彼女…いや、彼の言っていることが全くわからずギンは再び問い詰めた

「…ったく、鈍感な糞ガキだな

じゃあ、こう言えばいいか?この女が持っているだと」

予想もしていなかった答えが返ってきた

武器自体に意思があるなんて…

そして、それが彼女と融合してるとは…

「な、なんだと…!?」

あまりの驚きにそれ以上の言葉が出ないギン

それをよそに彼は続けた

「応答ついでだ、この俺の姿も見せてやろう」

そう言うと彼はあの時のように首筋に刃をさっと通らせた

少しずつ流れ出る血は刃に吸われ、どす黒いオーラを増幅させていった

だが、この時ギンはある異変に気が付いた

(左目だけが元の青い色に!?)

その目はどこか悲しみと苦痛に耐えてるようにも見えた

ギンは思った

もしかしたら自分の問いかけに反応するかも…と

「オルガ!俺だよ!ギンだよ!…俺のことがわかるならもうこんなことはやめようよ!」

だが、現実はそう甘くなかった

「ちぃ…下がれ…!」

彼が小さな声で囁き、彼女の表面化を抑え込んだのだ

そうして間もなく、彼女の左目は再び真紅の色へと変わっていった…

「あぁ…なんてことを!」

折角の問いかけにも応じられることはなく彼の暴走は進行していくのであった

「ククク…力が満ちてきたぞ」

血を吸うごとに鎌のオーラは増し、次第にオルガの体さえ包むようになっていった

流石にこのままやらせるのはまずいと思ったギン

「させるかよ!」

勢いに身を任せ、彼の復活を阻止しようとするが

オーラに手が触れた途端…

「痛ぅ…!」

手に激痛が走ったのだ

「クハハ!無駄だ!このオーラをまともに浴びれば命はないぞ!

クハハ!クハハハハ!」

自らの復活を確信した彼は何もすることが出来ないギンを見て高らかに笑った

その時、ギンは壮絶な光景を目の当たりにした

鎌の放つオーラにオルガの身が包まれていく最中、もがき苦しむ、本来の彼女の姿があった

「あ”ぁ”ぁ”ぁ”!いやぁぁぁぁぁぁ!」

手に持っている鎌を投げ捨てようと必死に振るのだが、彼の意思によって手放すことが出来ず、ただ虚しく空を切るだけだった

まさに最後の抵抗とも思える行動だった

「クハハ!無駄だ!その体…俺に委ねよ!」

「やめろ!彼女を解放しろ!」

オーラにより近づくことの出来ないギンは必死に訴えかけることしか出来なかった

「クハハ!もう遅いわ!…まぁ、もとよりこいつを手放す気は無いがなぁ」

間もなくして、オーラは彼女の体を完全に包み、オルガの悲痛な叫びも聞こえなくなった

それと同時にオーラが凝縮を始め、次第に人の形へと変わっていった

「くぅ…くそう!なんてことだ!」

苦しむ彼女に何もすることが出来なかったギンは絶望した

だが、その直後、絶望よりも背筋が凍るような感覚を覚えるほどの恐怖を感じた

そして、凝縮していたオーラが突如大きな風圧を巻き起こしながら散布した

ビュオォォォォォ

「く…な、なんだ…!」

風圧により巻き起こる砂埃に目がやられないよう腕でかばいつつも、復活を遂げてしまった彼の姿を見ようと様子を窺った

放出される黒いオーラが次第に晴れていき、彼の姿がようやく見え始めた

ぼろきれで出来た真紅のローブ、そして全身にオーラを纏い表情すら窺うことが出来ない禍々しい姿

まさに死神を思わせる容姿だった

「ククク…待たせたな、これが俺の本当の姿だ」

発言をするごとにその口からもオーラを放出している

彼の負の力は絶大なもののようだ

「それが…ソウルイーターの本当の姿…」

その恐ろしい姿にギンは後ずさりする程だった

「おっと、自己紹介が遅れたな…俺の名は

キリーク

以前の宿主の姿の時は黒い猟犬という異名で呼ばれていたなぁ…クハハ」

幾度と宿主を変えてきた彼はいくつもの異名を持っているようだ

「ソウルイーターが名前じゃないのか…?」

「ソウルイーターはあくまでも仮の姿の時だ

前にも聞いただろう…ソウルバニッシュの名も」

以前彼女が振るっていたソウルイーター…あれはあくまでも仮の姿

宿主の力に任せた覚醒前の状態

そして、本性を現した今はほぼ100%の力を出せるというわけなのだ

「しかし…この体は馴染むなぁ…クク、実にいい!この俺のために生まれたと言ってもいい!」

キリークにとってオルガの体は相性がいいらしく100%…いや、それ以上の力を出せるらしい

「なんてこった…」

戦う前から勝機を喪失した気になったギン

最早戦う意思すら見せなかった

だが…

「俺は楽しみたいんだ…そんなやる気の無い奴を殺しても面白くない

あの時にように見せろよ…ツミキリとやらを!」

勝利を確信していたキリークは余裕な表情でギンに本気での戦闘を要求した

「………」

彼の要求に対して、ただひたすらにうつむくギン

だが、彼も諦めてしまったわけではなかった

「…いいだろう…今度こそ決着をつけよう…」

「クハハ!その意気だ!さぁ…見せろ!今一度!」

そしてギンは2本の刀を鞘から抜き、精神を研ぎ澄まし始めた

「はぁぁぁぁぁぁぁ…!2つに分かたれた刃よ、罪深き者のために今こそ真の姿を現せ!」

以前よりも激しい光を放つ刀

彼もまた強くなったのだ

「ほぅ…以前より力をつけてきたか…だが、そうでなくちゃなぁ…クク…クハハハハ!」

刃の輝きが頂点に達した時

「これが…ツミキリの姿だ!」

2本の刀を重ね合わせ、1つの太刀と化した

彼の身の丈を軽く超すその太刀はこの時を待ちわびたと言わんばかりに悲しげな光を刀身いっぱいに帯びていた

「ククク…この感じ…この感じだ!さぁ…いくぞ!」

荒野一帯に伝わる程の殺気にギンもすかさず身構えた

身構えたと同時にキリークは地面を滑降するかのように急接近した

その速さは風の如き速さだった

一瞬にしてギンの目の前に現れ、その鎌を振りかざした

だが、その一撃はどう見ても隙だらけの攻撃だった

「甘すぎるんだよ!」

キリークの一撃を掻い潜り、彼の顔面目掛けて太刀を振った

そして彼の額から血が滴り落ちた

だが、彼は至って余裕な表情だった

「ククク…何か忘れてないか?」

両手を大きく広げ何やら意味深な言葉を投げかけた

「何が言いたい?」

彼の問いを全く理解できなかったギンは質問で返した

「おやおやおやぁ、薄情なやつだぁ…

この俺の体のすぐ下にはあの女の体があることを忘れていないか?」

うかつだった

完全に覆われてしまい、彼女の体は失われたものだと思い込んでいた

そう、彼の額から流れたと思われた血は彼女の物だった…

「じゃ…じゃあ、今のは…」

ふと思い出し慌てふためるギン

「そうだ、これは俺の血じゃない…あの女の血だ

つまり、俺を斬れば女が死ぬ…だが、俺を斬らねばお前が死ぬ…

お前を殺すこと…お前に殺されること…どちらも同じなのだよ

ククク…これほど無意味なゲームはないだろう

だが、俺は信じてるぞ…最期のその時まで、お前は抗ってくれるとな!クハハ!」

ギンは絶対に勝つことの出来ない闘いを強いられていた

だが、彼も大人しくやられるわけにはいかなかった

「無意味かもしれない、だけど、何もしないでやられるわけにはいかないんだよ!」

反撃に転じるが彼を斬れば彼女の肉体までも切り裂いてしまう事実を知ってしまい

どうしても斬ることができなかった

「ククク、どうした?斬れよ!クハハ!」

余裕の笑みを浮かべながらギンの攻撃を受け止めるキリーク

その死闘は20分にもおよんだ 

 

 

「はぁはぁ…」

長時間の戦闘により、ギンの体力は最早限界だった

「どうした?もう終わりか?

…つまらん…少々名残惜しいが、これで終わりにしてやろう」

そう言い放つとキリークは妙な構えを取り、舞いながら鎌を振り、無数の斬撃を繰り出した

体力の限界を迎えていたギンは防ぐのでいっぱいだった

そして、戦局は大きく傾くことになる…

ギンの持つ太刀にヒビが入ったのだ

「ツミキリが…折れる!?」

「クハハ!どうやらその武器の方も限界のようだな!…そぉらぁぁ!」

鎌を大きく振りかぶり真っ直ぐギンに目掛けて振り下ろした

バキィィィィ!!!

そして、ツミキリは大きな金切り音をあげ、砕け散った

「ツミキリが!」

その折れた刀身からは遥か昔から葬られた罪人らの魂が飛散していった

その直後、ツミキリは眩い光を放ち始めた

「な、なんだ!?」

口を揃えて驚愕する二人

なんと、折れた刀身の下には更にもう一本の刀身が眠っていたのだ

「こ、これは…なんだ!?」

所持者であるギンでさえ知らなかった隠されたもう一つの刀

「馬鹿な!俺は今まで鞘に見立てた刀身と戦っていたのか!?

強度的にもありえない!…ありえない!!

あんな、なまくら刀ごときにぃぃぃぃぃ!!」

そう、キリークが相手をしていたのは鞘の役割を果たしていた擬似の刀身だったのだ

そして、新たに現れたその刀はオロチアギトと呼ばれていた伝説の刀

驚きを隠せなかったキリークだが、勝機を未だ持っていた

切り札である彼女の肉体がある限り、彼には負けはないのだ

「は、はん!そんな一気に短くなった刀で何が出来る!

それに俺にはこいつの体がある…よって、俺には負けの二文字は無いのだ!」

勝利を焦った彼は未知なる刀の性能を調べることも無く、ギンに再度攻撃を仕掛けた

だが

その攻撃は軽く受け止められてしまった

渾身の一撃であるのにも関わらず…

「ば、馬鹿な!何故だ!何故お前はそんなに軽々しく受け止められる!?

俺は全力で振り下ろしたのに、何故お前は力を入れず受け止められるんだ!?」

そう、ギンは全く力を入れずに彼の一撃を受け止めたのだ

いや、力を入れる暇が無かったという方が妥当であろう

「お、俺の頭の中に誰かが直接語りかけてくる…誰なんだ…」

清き心を持つ少年よ…悪しき血を討ち滅ぼせ…

我が名はオロチアギト…呪われし一族によって作られた妖刀なり

我が役割は闇を斬ること…肉体を滅ぼすのではなく

悪しき心を斬ることだ

とある名工によって作られた刀、オロチアギトを鍛え上げた鍛冶師の想いがギンに伝えられた

その刀鍛冶の想いを現すように、刀身は更に眩く輝いた

「忌まわしい光だ!消えろ!」

そう言うとキリークは鎌を大きく横になぎ払い、オーラの塊を刃から放出した

だが、ギンは避ける素振りを見せず、その重力球を断とうとした

「悪しき心を討つ…こうか!」

狙いを重力球、そしてキリークに定め、ギンは集中し刀を振るった

その剣先からは一つの剣閃が放たれた

剣閃は重力球をかき消し、そのままキリークの元へと向かっていった

「…な!」

身構えるのが精一杯だった彼は自らの命ともいえる鎌で受け止めた

だが、剣閃の威力は凄まじく鎌の柄は手から離れてしまった

「しま…!」

鎌が手放されたことにより、キリークの体と、オルガの体は再び分かれたのだった

そして、剣閃を受け止めたことで鎌の柄にヒビが入ってしまったのだ

そのヒビを補修するかのように黒いオーラが吸い込まれていった

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!こ、この俺が…消える…消えてしまう…こ、これは面倒なことに…

なっ…た…」

辺りは再び静寂に包まれた

「か…勝った…のか?」

思わぬ一撃を繰り出し、その一撃でキリークを退いたことに未だ勝利をギンは実感できていなかった

だが、ふと我に返ったギンはオルガの安否が気がかりだった

慌てて倒れている彼女のもとへ駆け寄った

「オルガ!…い、いや…姉さん!大丈夫かい!?目を開けてくれよ!」

斬ってしまった額から流れ出た血を拭い、彼女に必死に訴えかけた

その声に少々遅れながらもオルガは目を覚ました

「こ、ここは…?私は…生きてるの…?」

「よかった…生きてるんだよ…!生きてるんだよ!姉さん!」

力なく起き上がったもののオルガの生存を知った嬉しさのあまり彼女に抱きつくギン

だが、彼女からは思いがけない言葉が放たれた

「ギン…あんたには苦労かけちまったね…」

まるで何もかも知っているかのような様子のオルガ

「え…どういうこと…なのさ?」

予想だにしていなかった発言にまたも戸惑うギン

そんな彼の様子も気にせず彼女は続けた

「鎌に魅せられている間、私は意識や記憶がなかったわけじゃないんだ…

今までの行動は全て私自身の意思で行われていたんだ…」

彼女の言葉に対して半信半疑だったがギンの心の底から怒りが込みあがり、

その怒りをぶつけた

「どういうことだよ!それじゃ、今まで殺してきたガーディアンズの仲間達もあんたの意思だったって言うのかよ!?」

その言葉を真摯に受け止め、うつむきながらも彼女はこう言った

「ここに至るまでの話をギンに教えよう…少し言い訳にも聞こえるかもしれないけどね…

数年前、あの作戦を目処に私は姿を消しただろう?その直後ある男からこの鎌を受け取ったんだよ…そしてその鎌を手にし、更に力をつけるために修行していたんだが、私の心に少しずつ、何かが芽生えていったんだ…

その声の主はキリーク…そう彼だ…

私も最初は全て拒絶した…だが、私は折れてしまったんだ…

修行に疲れ、一人であることに疲れ、そして昼夜問わず語りかけてくる彼の声に耐えられなかったんだ…

結果…私は彼の意思に従った

そして私は彼らを殺したんだよ

こみ上げる自らの破壊衝動に身を任せてね…」

つまりはキリークにたぶらかされたわけであるのだが、行動に移したのは彼女の意思そのものだったというわけなのだ

その話をギンは全く信じようとしなかった

「嘘だ!そうやってまた罪を無理やり背負おうとしてるだけなんだろう!?

姉さんはいつだってそうだ!自分だけの責任じゃないのに…いつも自分だけの責任だと言って全て自分の罪にする!

今回も…今回もそうなんだろう!?」

彼の問いかけに応えようとしないオルガ

「何か言ってくれよ!黙っているってことは、やっぱりそうなんだろう!?」

沈黙を貫いていた彼女だったが、その言葉に反応し否定した

「いや…今回は本当だよ…彼らを殺したのも、ギンを殺そうとしたのも

私自身の意志だよ…」

怒りを通り越し、悲しみの感情に達したギンは涙を流しながら首を横に振り、彼女の言葉を信じようとしなかった

「もう信じてくれなくてもいい

私はここで人生の幕を閉じることで罪を洗い流そうと思う…

死を持ってしても罪滅ぼしになるとは思えないけどね…今はこれしか思いつかないのさ…」

ゆっくりと立ち上がり、夕焼け色に染まった空を仰いだ

そのまま数分の時が流れ、彼女は意を決した

「さぁ…ギン

私を斬って!

ギンも流石に予想していたのか、驚くことはなかった

だが、当然ながらも彼はそこまではしたくなかった

「…出来ないよ…」

ただ、その一言しか出てこなかった

「私はいつまでも罪人でありたくないんだ…

さぁ、斬って…そして背負いすぎた罪から私を解放して…」

オルガもその意思を折ろうとしなかった

そしてギンはある事に気づき、刀を手にした

刀を手に持ったことを確認したオルガは覚悟を決め、涙を流しながら彼に感謝した

「ありがとう…これで私も救われる…」

だが、その後のギンの行動は彼女の予想を裏切るものだった

「やっぱり死んで罪を償うなんておかしいよ…生きて償ってこそ罪滅ぼしなんじゃないのかい?…そして悪いのは…こいつだ!

ギンは刀を頭上高く振り上げ、そして一気に振り下ろした…

だが、それはオルガではなく、ソウルイーターにだった

ガシャァァァン!

まるでガラスが割れるような音をあげ、塵のように跡形も無く鎌は砕け散った

ギンの言葉と行動に冷静さを取り戻したオルガは自らの選択の過ちに気づいた

「ギン…」

だが、それ以上の言葉は出て来なかった

間もなくして、どこからともなく彼の声がした…

そう、キリークの声が…

クハハ…これで勝ったと思うなよ…

俺は何度でも蘇る

この世に悪しき心を植え込み、増大させるほんの僅かな隙間がある限り…

その言葉を最後に、彼の言葉は聞こえなくなった

「何度でも蘇る…か…」

彼の言葉にただうつむくだけのオルガ

また自分のような被害者を出してしまうのかと思うと気が滅入ってしまったようだ

そんな彼女の姿を見てギンは

「大丈夫、また奴が現れたら切り伏せるだけさ

だけど、今度は俺一人じゃない…姉さんと一緒に…奴を討つんだ!

何度でも!」

励ますかのように生涯キリークに立ち向かう決意を表したギン

その言葉にオルガも少々元気を取り戻した

「そうだね…あいつに立ち向かうことが、私の最大の罪滅ぼしかもしれないね…

その旅…私もついて行くよ…一生ね」

そして、彼らはいつ、どこに現れるかもわからないキリークに立ち向かうため

新たな旅、新たな人生を歩み始めたのだった…

キリークの暴走に立ち向かうために一生を捧げた彼らはこの後、誰の目につくことはなかった…

~Fin~

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特殊な試み

え~っと皆さんこんばんわっ

ちょっと今日は特殊な試みをしたいと思います

それはイーさんが書いている小説の続きをアナザーストーリーとして書いてみることです

詳細はイーさんのブログにて

では早速いってみましょ~~!!

 

【モトゥブ 荒野地】

暫しの間、静寂が辺りを包んだ

ギン「女だと思って甘くみていたが、アンタ…結構やるな」

止血したとはいえ、ソウルイーターによる一撃は重く、深い傷を負い、精気を食われているため苦しそうな表情は隠せなかった

 

オルガ

「女だと思って甘く見ないで欲しいわね…

そこに転がっている連中もそうやって私を甘く見た結果、この子のご馳走になったってわけ…そして次は貴方の番よ…ギン」          

そう言うと再び鎌に頬で撫で回した、そう…我が子を愛するように

ギン

「生憎様、俺はそんな物の食事のために来たんじゃないのでね」

苦痛を振り払うように2本の刀を握る手に力を込め、再び身構えた

 

オルガ

「あ~ら、強がっちゃって、可愛いわねぇ

でもね…あんまりしつこいのは嫌いなの…

そろそろ飽きてきたわね…

いい加減死んでもらうよ!

その言葉と同時に彼女は一気にギンへと急接近し、ソウルイーターを振りかざした

先ほどまでの攻撃の仕方とは違い、力任せに振り回し、無数の斬撃を繰り出した

ギン

「くぅ…防ぐのが精一杯だ…」

手負いの体では斬撃を間一髪のところで防ぐのが限界だった

オルガ

「あっはっはっは!どうした!ほ~らどうした!いつまで持つかしらねぇ!」

いつしか鎌を振り回す彼女の表情は冷たいものではなくなっていた

鎌の虜となり、狂気の表情と化していたのだった

ギン

「このままじゃやられる…こうなったら一か八か…」

そう言うとギンは何かチャンスをうかがう素振りを見せた

オルガ

「もうそろそろ体力の限界かしら…これで終わりにしてやるよ!」

斬撃の手を一瞬止め、僅かに後退し、身構えた後地面を蹴り上げ、高く跳躍した彼女はギンの頭目掛けて鎌を一直線に振り下ろした

ギン

「ここだ!」

頃合を見つけたギンは2本の刀をクロスさせ、彼女の渾身の一撃を受け止め、そのまま鎌の刃を地面へと深く突き刺した

オルガ

「あぁ…この子になんてことを…んもう!抜けないじゃない!」

渾身の一撃を受け止められた事に驚くことはなく、その鎌が地面に突き立てられた事に焦っていた

ギン

「よし、今の内に…こいつの力を解放させる!」

オルガが刃を抜く事に苦戦している間にギンは精神を集中させていた

ギン

「はぁぁぁぁぁぁ…

分かたれし、2本の刃よ!罪深き者を断ち切るため、今ここに真の姿を見せよ!」

精神集中が頂点に達したと同時に2本の刀は眩い光を放ちながら1つの大きな刀へと形を変えていった

オルガ

「…!なんなの!…あの光は…!」

鎌を抜き取るとこに気をとられ、彼が力を解放している事に気づかなかった彼女は眩い光を目にし、ようやく気づいた

それと同時に刃が抜けたが既に力の解放は終わっていた

ギン

「待たせたな…これがこの刀の本当の姿…これがツミキリだ!」

先ほどの小ぶりな刀とは打って変わって彼の身の丈を遥かに凌駕する長さと化し、数々の罪を切り伏せた封印されし野太刀「ツミキリ」へと変貌した

オルガ

「…貴方ってつくづく面白いわね…さっきの飽きた発言は撤回…もう少し楽しませてもらうわ…」

そのあまりにも長い刀を見たにも関わらず彼女は何故か落ち着いていた

ギン

「これでアンタも終わりだな…」

オルガ

「あら、何か勘違いしてない?この子もまだ本当の姿を見せていないのよ?」

ギン

「何だと!?」

オルガ

「面白い物を見せてくれたお礼にこの子の本当の姿…見せてあげる!」

そういうと彼女は事もあろうか自身の首筋に刃をさっと通らせた

だが、首から流れる血は胸元へと滴ることはなく、ソウルイーターへの刃へ吸い込まれるように流れていった

ギン

「な、なんだ!?何が起こるっていうんだよ!?」

自身を傷つける事にも驚いた彼だが、鎌が主の血をすする事に更に驚いた

そして鎌は血をすするごとに黒い霧のようなオーラを纏い始めた

オルガ

「さぁ…もっと吸っていいのよ…そして私に見せて頂戴…本当の貴方の姿を」

血をすすり終えた頃、黒いオーラは刃を見えなくするほど纏っていた

オルガ

「これがこの子の本当の姿…名前は…ソウルバニッシュよ」

元々禍々しい姿をしていた鎌は黒いオーラを纏い、更に禍々しい物へと姿を変えた

ギン

「まさかそいつも姿を変える武器とはな…ちょっと予想外だったよ」

オルガ

「貴方また甘く見たわね…しかも今度はこの子を…この子相当ご立腹よ

それにこの子とても寝起き悪くてね…今の私じゃ制御できないくらい不機嫌なの」

再び静寂が辺りを包んだ

先に仕掛けたのはオルガの方だった

先ほど仕掛けたように、高く跳躍し、ギンの頭目掛けて鎌を振り下ろした

ギン

「そんな大振りな攻撃は見切ってるんだよ!」

先ほど受け流した時にかわせると見切ったギンは彼女同様、高く跳躍することで回避した

しかし…

オルガ

「ふっ…甘く見るなって何度も言ったでしょう…そこだ!」

不適な笑みを浮かべた後、振り下ろした鎌を切り返すように上空のギンへと振り上げた

その振り上げた鎌からは纏っていたオーラの一部が彼に目掛けて飛んでいった

ギン

「…!おわっ!」

放たれた重力球は空中のギンへと一直線に向かったが、彼は間一髪のところで体を捻り、追撃をかわした

オルガ

「ちぃ!外したか!」

完全に意表を付いた一撃がかわされるとは思っていなかったらしく、さすがにイラっときていた

ギン

「ふぅ…今のは危なかった…今度は俺からいかせてもらうぜ!」

ギンはその長い刀をゆっくりと構え、全身を使って一気になぎ払った

そして、そのなぎ払いと同時に荒野一帯に大きな衝撃波を放った

オルガ

「…!く、くぅぅ!受け…止められない!う、うあぁぁぁぁぁぁぁ!」

鎌を両手にがっしり持ち、衝撃波を受け止めようとするが、その威力は凄まじく、彼女の体はゆうに2メートルは吹き飛ばされた

ギン

「ふっ…どうだ、こいつの力は…(でも、一度使うと暫く使えないのが欠点なんだよな)」

衝撃波によって吹き飛ばされた彼女は背後にあった岩に背中をを強打し相当のダメージを受けたようで、少しふらつきながら鎌を杖にするようにして起き上がった

オルガ

「はぁ…はぁ………ふ、ふざけやがって…なんだ今のは…」

ギン

「こいつは今まで多くの罪人の罪そのものを切り伏せてきた…相手の罪の重さに比例してこの光の壁の威力は増すのさ」

オルガ

「はっ!!お前に私の何がわかる!…知ったような口を聞くんじゃねぇ!…まぁいいわ…お互いのダメージは大きいようね…次の一撃で終わらせてあげる…」

ギン

「…そうだな…そろそろ決着をつけようぜ…」

2人はふらつきながらも一度間合いを空け、決着をつけるため、身構えた

一瞬彼らを取り巻く世界そのものが止まったように思えた

ギン&オルガ

うぉぉぉぉぉぉぉ!!!

そして、ほぼ同時に2人は急接近し、最後の力を振り絞って刃を交えた

ガキィィィっと金属が擦れる音がしたその直後、1本の刃が宙を舞った

決着が付いた瞬間だった

オルガ

「…そんな…ソウル…バニッシュ…が…私の…腕が…!」

彼女の右腕はツミキリによって二分され、宙を舞った鎌を未だにしっかり握っていた

鎌ごと切り落とされ、その体から離れたにも関わらず…

ギン

「アンタの罪は重すぎた…罪だけでなくアンタの体そのものまでもこいつは切り伏せなければならないと判断したようだよ」

そう言い放つ彼の表情はどこか悲しげだった

オルガ

「…そんな…そんな…私のソウルバニッシュが…なんてことなの……!がっ!」

酷く落ち込んでいた彼女が天を仰いだと同時に鎌の半分が彼女目掛けて舞い降りてきた

…彼女の心臓めがけて

オルガ

「そ、そうだった…のね…貴方…私の…魂…も欲し…かった…の…ね…いい…のよ…いっぱい…お食べ…心…ゆくまで…ね」

意識が薄れ行く中、彼女は刃を抜くどころか、更に自身の心臓の奥深くまで突き刺した

そして、その姿勢のまま彼女は動くことはなかった…

その表情は先ほどのような狂気の表情ではなく、優しく微笑んでいた…

ギン

「どうせ出会うならもっと違う形、違う場所で会いたかったよ…戦場ではなく…平和な場所で…」 

 

Fin

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