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夢か幻か(リンク小説)

前回までのあらすじ 

序章

序章2

序章3

序章4

 

ひとつの言の葉が響き渡る

私はお前

 

お前は私 

 

そして、私はお前を生んだ母

   

また一つ、言の葉が響き渡ってきた 

目覚めなさい私の可愛い娘よ

 

可愛い可愛い娘

 

唯一残った最後の子供よ

 

お前の兄弟らを殺めた奴らを殺してきなさい

 

【夢か幻か】

~ガーディアンズコロニー 4F~

「待て!」

急な呼びかけに振り返って見ると、そこにはよく知った顔があった

「どこへ行くつもりだったんだ?」

大きめな黒いコートを羽織ったヒューマンの男がオルガの許へ駆け寄ってきた

急いで来た割には汗一滴垂らすどころか落ち着いた様子でサングラスをクィっと中指で上げた

彼の名はトシ、普段から落ち着いた様子の彼だからこそ、彼女はトシの妙なまでの落ち着きっぷりには疑問を抱かなかった

ただ、彼の質問には彼女は答えられなかった

どこへ行くつもりでもなく、ただじっとしていられなかったからだ

「あ…いや…どこへ…行くつもりだったんだろう…は、はは…」

毎度の事ながら、緊急事態の時に考えるよりも先に行動を起こしてしまうのは彼女特有の癖だった

その様子を見てトシは、またいつもの事かと言わんばかりにため息混じりで返した

「全く…その癖直せよ…」

オルガとトシは長い付き合いだった

彼女らには幼い頃、同盟軍が秘密裏に出兵させていたチャイルドソルジャーだった過去がある

今ではお互い違う道を歩んでいるが、未だに交流は続いていた

いわゆる腐れ縁である

だが、彼女らとの間には深い亀裂が生じていた

お互いそれには触れないようにして生きているが、あの惨劇の事はオルガはもちろん、トシも忘れてはいなかった

「癖なんだから…直しようがないだろ…」

事実なだけに小声で反論することしか出来なかった

これも毎度の事である

だがトシは彼女の小言を聞き入れる事なく、この妙な事態についてオルガに質問を投げかけた

「それよりも一体これはどういうことだ?パルムだけかと思ったら惑星全土らしいじゃないか」

早くも惑星全土、ガーディアンズ及び、同盟軍らにも今回の事態について情報が飛び交っているようだった

オルガも完全には把握していないながらも先ほど起きた謎の現象について話した

「チューンナップ店奥のシミュレータールームで戦闘を終えた直後に急に目の前が真っ白になったんだ…そしたら…ルークも…ハンスもいなくなっててさ…」

必死に頭の中で整理しながら話してはいるのだが、未だにパニック状態が収まりきっていないようだった

「ふむ…それで?」

トシはそんな彼女を落ち着かせるわけでもなく、ただ静かに聞き手に回っていた

サングラスの奥で彼の鋭い瞳が彼女をじっと捉えて離さなかった

「えぇと…妙に外が静かだったから慌てて出てみたんだけど、住民の皆はまるで何事も無かったかのように過ごしてるんだ…なんていうか、生気を感じられなかったな…」

急ぎ、本部へ駆けつけてしまった彼女は住民らとの接触をしていなかった

だが、今その様子を思い出してみると妙な雰囲気だった

住民だけじゃない、コロニー全土から魂が抜けてしまっているように思えてきた

「そうか、こちらも同じような感じだな」

トシも先ほど駐屯先のパルムにて起きた事態を説明した

「同盟軍内部は普段と変わらないのだが、どうも外の住民らの様子がおかしいんだ

意識はあるにはあるんだが、焦点が定まっていなくて、やはりお前が言うように生気を感じられなかったな」

コロニー全土だけでなく、全ての惑星から魂が抜けてしまっているようだった

最早グラール太陽系は外殻だけ存在するゴーストタウン化してしまった

中身の無い世界

二人はこれから更によからぬ事態が起きようとしているのを感じ始めた

「あ…そうだ…!」

ふと我に返り、彼女は今回一番重要な点について彼に質問した

「本部の話じゃガーディアンズが大勢行方不明になってしまったんだ、それも急に目の前から…もしかして、同盟軍でも同じことが?」

やはりか、といった表情でトシは答えた

「同盟軍の被害はそれほど多くはない、何故かガーディアンズだけ被害が深刻らしいな」

同盟軍直属の暗部のトシは同盟軍の内部事情にも詳しいが、その他の組織についても様々な情報を持っている

「グラール教団も同盟軍と同じく被害は少ないようだな、そしてイルミナスに関しても同様だ。だが、イルミナスに関しては既に被害を最小限に抑える手立てを施していたらしい」

流石はキャスト至上主義の同盟軍に所属することが出来ている人間だけはあるといった感じだった

敵対組織のイルミナスの情報さえ得ているのだから

「最小限に抑える手立て?」

主謀で無いにも関わらずこの事態を避けることが出来ているイルミナスにオルガは疑問を抱いた

「ガーディアンズも通信で聞いていたはずだが、某かの協力者によってこの事態を知ったらしい。」

そして急にトシの表情が険しくなった

「そして被害を抑えるために奴らは一部の部下らを殺したらしい…」

予想だにしていなかった答えだった

防ぐというよりも、まるで危険を排除するといった単純な手段だった

「そんな…!殺しただって!?だって…仲間だろ?」

イルミナスのあり得ない行動に彼女は更にパニックに陥っていった

深く考えても彼女には考えられない行動だった

【仲間を殺す】だなんて…

「事実は事実なんだ、奴らの考えまでは俺にはわからん。そうでもしないと防げない程の事なんだろう」

ため息交じりにサングラスを再び上げながら答えた

まるでイルミナスの考えなど興味が無い、といった感じだった

「それにまだ協力者の情報がない、そちらについては調査を続ける。それよりも…」

トシは眉間にしわを寄せ、何かを言いかけて急に黙り込んだ

流石に何かを言いかけて黙られるのは彼女にとっても気持ちの悪いものだった

「…それよりも…?」

彼の顔を覗き込むように恐る恐る聞いてみた

「今回の事態と直接関わりがあるかはわからないんだが、俺たちは今、とある消えたガーディアンズを追っているんだ」

おかしな答えが返ってきた

消えてしまった者を追うなど出来るはずがないのだから…

「消えたんだったら存在するわけないじゃないか、それに消えたガーディアンズなんて大勢いてわからないよ…」

彼女の頭は完全に混乱していた

不可解な答えについて考えてみるも答えを導き出すどころか、様々な憶測が出ては消え、絡まっていった

「消えたには消えたんだが、そいつは…再び現れたんだ、そいつだけが消えたガーディアンズの中で再び姿を現し、そしてグラール太陽系を瞬時に移動しているんだ」

消えては現れる…ナノトランス技術で移動しているのかと考えてみるが、それでも惑星間を単体で移動できるガーディアンズなど存在するはずがなかった

それどころか、ヒトなのかすら疑問に思えてきた

考え込み、黙り込んでしまっている彼女を尻目にトシは数枚の写真を彼女に見せた

「こいつが俺たちが追っているガーディアンズだ。この数十分の間に全ての惑星で捉えた物だ」

よく見ると撮影時間が数分置きに撮られている事になっていた

「こいつ…確か…」

彼女は覚えていた、ほんの数回しか任務に同行した事がないのだが

到底ガーディアンズとは思えないほど非力なテクニック攻撃部隊のニューマン

一人だけ背が低く、ほっそりとしていた容姿は忘れるはずもなかった

「イースレイ!こんな奴が…!?だって、あいつテクニックですら大した力を発揮できないんだぞ?」

間髪入れず、トシは同じような答え方をした

「事実は事実だ、現に全惑星で包囲網を敷いてみても、完全に追い詰めたという状況でも、奴は俺たちの目の前から消え、そして違う星に移動してるんだ」

それでも彼女には信じられなかった

テクニックすらまともに扱いきれてないイースレイに自らを転移させる事など出来るわけが無いのだから

更にトシはこうも続けた

「どうもイースレイの様子がおかしいんだ…まるで急に人が変わったかのように鋭い目つきになっていて、そう…強大な力を得ているような雰囲気だった。だが、狂気に満ちた顔じゃなかったな…」

人が変わる…それなら納得はいくが、狂気に満ちた感じで無いのならSEEDに侵されているとは考えられなかった

「もう、どういう事さ?さっぱりわからなくなってきたよ…」

最早彼女には答えを探ることが出来なくなっていた

少々面倒くさがりの彼女ではあるものの、今回ばかりは必死に答えを探ってはいた

だが、それでも導き出すことは出来なかった

「俺にもわからんさ…だから追っているんだよ」

再びため息混じりに答えるトシ

そして、二人の間に暫し静寂の時が流れた

暫くしてその静寂をトシが裂いた

「困った事にな…今現在イースレイの足跡が完全に途絶えてしまったんだ。

部隊からの定時連絡はあるものの、発見報告はない…かといって、完全に消滅したとは考えられない、どこかに潜伏していると考えた方がいいだろう」

潜伏…その道のプロである彼ら暗部ですら見つけられない程では事態は困難を極める物だと彼女は感じとった

「ややこしい事になってきたなぁ…」

面倒な事が嫌いな彼女にとってイースレイの件は頭を痛める物でしかなく、ため息を吐きながらうな垂れるしかなかった

そんなオルガの様子を見てトシは今日のところは打ち切った方がいいだろうと感じた

「これ以上の捜索は時間の無駄だ、また明日捜索を再開するしかないな。俺たち部隊の疲労も限界だ…短時間でグラール太陽系を何度も回ったんだからな…」

こうしてこの日の様々な疑問を残しながらも二人は別れ、一日を終えた

イルミナス壊滅まで後一歩というところで新たな問題と謎を残して…

 

 

第一章【夢か幻か】                                   ~Fin~

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